ま~
もう軍備はいらない

もう軍備はいらない 坂口安吾 原子バクダンの被害写真が流行しているので、私も買った。ひどいと思った。 しかし、戦争なら、どんな武器を用いたって仕様がないじゃないか、なぜヒロシマやナガサキだけがいけないのだ。いけないのは、 […]

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は~
帽子のない水兵

帽子のない水兵 田中貢太郎 まだ横須賀行の汽車が電化しない時のことであった。夕方の六時四十分比ごろ、その汽車が田浦を発車したところで、帽子を冠かぶらない蒼あおい顔をした水兵の一人が、影法師のようにふらふら二等車の方へ入っ […]

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ま~
六日間

六日間 (日記) 與謝野晶子 三月七日 机の前に坐ると藍色の机掛つくゑかけの上に一面に髪の毛の這つて居るのが日影でまざまざと見えた。私はあさましくなつて、何時いつの間にか私の髪がこんなに抜け零こぼれて、さうして払つてもど […]

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な~

猫 宮沢賢治 (四月の夜、とし老とった猫が) 友達のうちのあまり明るくない電燈の向ふにその年老った猫がしづかに顔を出した。 (アンデルゼンの猫を知ってゐますか。 暗闇で毛を逆立てゝパチパチ火花を出すアンデルゼンの猫を。) […]

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わ~
ワーニカとターニャ

ワーニカとターニャ 宮本百合子 黄色いモスクワ大学の建物が、雪の中に美しく見える。凍った鉄柵に古本屋が本を並べてる。 狭い歩道をいっぱい通行人だ。電車が通る。自動車が通る。 モスクワ大学のいくつもある門を出たり入ったりす […]

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ら~

癩 島木健作 新しく連れて來られたこの町の丘の上の刑務所に、太田は服役後はじめての眞夏を迎へたのであつた。暑さ寒さも肌に穩やかで町全體がどこか眠つてでも居るかの樣な、瀬戸内海に面したある小都市の刑務所から、何か役所の都合 […]

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や~
闇汁図解

闇汁圖解 子規 一、時は明治卅二年十月二十一日午後四時過、處は保等登藝須發行所、人は初め七人、後十人半、半はマー坊なり。 一、闇汁の催しに群議一決して、客も主も各物買ひに出づ。取り殘されたる我ひとり横に長くなりて淋しげに […]

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ま~
マードック先生の『日本歴史』

マードック先生の『日本歴史』 夏目漱石 上 先生は約やくの如く横浜総領事を通じてケリー・エンド・ウォルシから自著の『日本歴史』を余に送るべく取り計はからわれたと見えて、約七百頁の重い書物がその後日ひならずして余の手に落ち […]

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は~

葉 太宰治 撰えらばれてあることの 恍惚こうこつと不安と 二つわれにあり ヴェルレエヌ 死のうと思っていた。ことしの正月、よそから着物を一反もらった。お年玉としてである。着物の布地は麻であった。鼠色のこまかい縞目しまめが […]

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な~
泣いてゐるお猫さん

泣いてゐるお猫さん 村山籌子 ある所にちよつと、慾よくばりなお猫ねこさんがありました。ある朝、新聞を見ますと、写真屋さんの広告が出てゐました。 「写真屋さんをはじめます。今日写しにいらしつた方の中で、一番よくうつつた方の […]

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